続・竹林の愚人 琳派のデザイン学

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琳派のデザイン学


琳派のデザイン学 (NHKブックス No.1202)琳派のデザイン学 (NHKブックス No.1202)
(2013/02/23)
三井 秀樹

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日本美術が西洋絵画と決定的に異なる点は、二次元絵画と三次元絵画という次元の異なる表現性にあった。
本来、絵画という芸術は作者の捉えた三次元の物体や情景を平面上に三次元に見えるように描く再現性の表現であるというのが西洋人の思い描く絵画の美学でした。
これに対し東洋画、ことに日本絵画では対象を観察し、平面上に写しとる上で、作者が対象に対するさまざまな思い入れや自由な発想力と、装飾的な意匠を統合した表現に生き甲斐を見出したのです。
これは西洋の写実(リアリズム)が究極的に「芸術のための芸術」という純粋美術(ファインアート)を至上目標としたのに対し、日本絵画は写実と装飾、つまり意匠性を共存した美学・哲学を有していたからでしょう。
つまり西洋では写実の概念と装飾美術は相反する対立の関係であったのに対し、日本美術は写実と作者のイマジネーションと装飾を巧みに融合させた装飾美術であり、また屏風絵、襖絵のように人々が生活する住空間を愉しむための生活美術、すなわち応用美術であったという、相反する美学なのです。
さらに装飾性という飾る文化を大切にした日本人の美意識があったからこそ、写実的な表現に終始することなく、華やかな紋様と抽象形体をコンバイン(組み込んだ)させた装飾性の高い応用美術でもあるという解釈も成り立ちます。
つまり、日本美術は装飾美術や応用美術を超えたデザインという概念で捉えれるのではないでしょうか。

西洋人が浮世絵や屏風絵など日本美術に遭遇するまで、西洋では装飾美術・工芸の領域を応用美術と決めつけて純粋美術より芸術的価値が劣るという見方が大勢を占めていました。
その後彼らは日本美術の大部分が生活の中に取り込まれた応用美術であることを知り、また産業革命彼の成果としてのデザインの重要性に覚醒し、これまでの西洋の芸術に対する価値観が誤りだったことを悟ります。
小袖という衣裳にさえ、これを芸術表現のメディアとして捉え、着飾り、装飾や絵画的な描写の対象としてしまう日本人の美に対する感性の鋭さに西洋はたちまち虜になりました。
これが基となり19世紀末ファッションやテキスタイルデザインに革命的な変革を起こしたのです。

19世紀末、西洋にジャポニスム旋風が吹き荒れていた頃、日本は明治時代の文明開化を迎え、琳派の影響は社会の欧風化とは反対に見る見るうちに衰えていきました。
ところが、アールヌーヴォーの流行が西洋に流行りはじめると、国内で「琳派」美術を再評価する機運が高まりました。
こうした琳派美術の影響は、明治、大正時代を経て現代に及び、近代日本画の潮流を形成していったのです。
京都画壇の村上華岳、山口華楊、小野竹喬、前田青郷から東京美術学校を中心とする東山魁夷、加山又造、平山郁夫まで、琳派の美を継承する多くの日本画家が育っていきました。
一方、江戸時代につくられた蒔絵の調度品、箸など髪飾り、刀剣、兜などの武具から金工による飾りものが大量に万国博覧会に送られ、その高い芸術性と精敵な細工で西洋人を魅了しました。
これに気をよくした日本政府は、明治時代の博覧会に欧米の嗜好を採り入れた豪著な装飾工芸品を次々と送り込みましたが、日本の伝統的な芸術品とは評価されず、その人気は急激に衰えていきました。
こうしてジャポニスムは終焉を迎えたのです。
しかし琳派の美学、そこに宿る私たち日本人の美意識は脈々と生きつづけていました。
その答えが21世紀を境に海外から湧きあがった「クールジャパン」など日本文化礼賛の潮流だったのです。
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