続・竹林の愚人 ハワイ・南太平洋の神話

ハワイ・南太平洋の神話


ハワイ・南太平洋の神話―海と太陽、そして虹のメッセージ (中公新書)ハワイ・南太平洋の神話―海と太陽、そして虹のメッセージ (中公新書)
(1997/09)
後藤 明

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ハワイの創世神話『クムリポ』は、ハワイ王国の第7代目の王となったカラーカウア王の系統に秘密裏に伝承されてきた創世神話である。
『クムリポ』は2102行にもおよぶ膨大な叙事詩である。
宇宙の起源から始まり、延々と生物進化を語り、その次には気の遠くなる数の王の名前を語り継ぐ。
この神話はハワイ王国の礎を築いたカメハメハ大王の祖父の代にあたる王子の誕生のときに、おそらく18世紀初頭ごろに編まれて詠唱された。
その後、同じ系譜をひくカラーカウア王が1881年に公表した。
そして彼の後を継いで王位についた妹のリリウオカラ二女王が英語に翻訳したため、いまわれわれはハワイ王族の聖なる歌に接することができる。
リリウオカラニはハワイ王国最後の王で、『アロハ・オエ』の作詞者である。
19世紀末、彼女の治世のとき、アメリカの陰謀で王国が倒されたため、彼女は悲劇の女王となった。
『グムリボ』はハワイ王国の末期まで秘密にされてきた。
その語るところは生物学で教える進化論にも匹敵するほど科学的な部分がある。

クリムポ

『クムリポ』では最初の生物として珊瑚とポリプが現れ、さらに環形動物ないし線虫動物、棘皮動物、そして二枚貝、巻き貝といった軟体動物と一部節足動物というように、海に住む種類を中心として無脊椎動物が次々に出現する。
それに続いてリフレインの形で植物の発生が海藻、そしてコケやシダ類と、海生と陸生の種類がペアにされて延々と語られて第1歌が終わる。
第2歌では魚類を中心とする海生動物が現れる。
イルカ、タコなど泳ぐ動物である。
そして第2歌のリフレインには、魚類と陸生の植物がペアをなして語られ、「魚が生まれ、それはその植物に守られて」といった表現がとられる。
第3歌では若干の植物が生まれた後、昆虫や鳥などの飛ぶ動物が続く。
第4歌で這う動物が登場する。
これにはヤモリのほか、亀、エビなど海生動物も入っている。
第5歌では作物と家畜が一緒に語られる。
第6歌では鼠と王族の起源になる動物が現れる。
第1歌から第4歌までのモチーフは自然の動植物であり、第5歌になって、人間に近い、人間の手が加わった動植物へと移行する。
自然から文化への移行を表すといえよう。
面白いのは第6歌で鼠が登場することだ。
王の系譜が起こり、食物のタブーが定められ、陸と海の食物が満ちると鼠が登場するというわけだ。
人間の登場はまだだが、ハワイの王族の多くは動植物に系譜を辿るので、その礎がここで築かれたと言えるであろう。
第7歌までは夜であった。
不思議な第7歌は新たな展開を予感させる。
第8歌になると、いよいよ神々が登場する。
ライライという女神と、キイ、カーネ、カナロアという男神である。
第8歌の最後でついに昼が始まる。

クリムポ

神話に登場する神々、そして王族の系譜につながり第16歌で終わる。

『クムリポ』はハワイ人特有の生命観を無造作に披露したものではない。
何より『クムリポ』は聖なる子どもの誕生を祝う歌である。
そこには単に王権の系譜を神々につなげるためだけでなく、生物の発生と子どもの誕生のプロセスを重ね合わせる、という深淵な思考が見られる。
このように『クムリボ』には、その意味・内容だけでなく、民俗生物学、生物と神々の対応関係、生物のシンボリズム、さらに色彩や音声のシンボリズム、というように幾重にもマルチメディア的仕掛けが施されているのだ。
そしてわれわれはその全容をまだ解明し終えていない。
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  1. 2013/08/27(火) 07:00:29|
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