続・竹林の愚人 海から見た歴史

海から見た歴史


東アジア海域に漕ぎだす1 海から見た歴史東アジア海域に漕ぎだす1 海から見た歴史
(2013/01/17)
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1274・81年の2度にわたる日本侵攻以外にも、元朝は朝貢勧告や協力要求にしたがわないジャワ・チャンパー・陳朝大越に出兵した。
しかし、戦役が終息したのち、こうした諸地域との貿易はむしろ活況を呈した。
実際、14世紀は、近代以前において日本から中国へわたった僧侶がもっとも数多く確認できる時代だ。
このことは、彼らが渡航に利用する日中間の貿易船が、それだけ恒常的かつ頻繁に往来していたことを意味する。
元朝に対して軍事的な警戒態勢をとりながら、日本の朝廷(公家政権)や幕府(武家政権)は、寺社経営の資財を調達するためのパトロンとなる形でみずから中国との貿易に関わっていた。
政治権力による柔軟な港湾管理と、貿易に対する積極化という状況が各地に共通してみられ、それが政治的・軍事的な緊張をともなうなかで維持・増進された。

中国では唐代の8、9世紀以来、南部地域で運河・耕地の整備にともなう開発がすすみ、大規模な人口移動がおこり、東南沿海部に経済の重心が移動していった。
元朝治下では華北と江南をつなぐ陸上・水上の交通が整備され、穀倉地帯である江南で徴収された税穀が国都の大都(現在の北京)まで海上輸送される。

日本では10世紀ころから大規模な農地開発がすすみ、12世紀には貴族や大寺社の荘園が発達。
そして二毛作・畑作の普及による集約化と生産性の向上がすすみ、工芸作物の栽培が発達してくる。
こうしてうまれた余剰農産物や手工業品は商品経済の発達をうながし、京都・鎌倉の2大都市を核とした都市間交通と地方をつなぐ交通も発達し、港町を廻船が往来した。
物流の拠点には運送・委託販売業者の問(問丸)が登場する。
そして公家政権(朝廷)・武家政権(鎌倉・室町幕府)・壮園領主・大寺社などが設置した関所で関銭(通行料)が徴収された。
鎌倉幕府の実権をにぎった北条氏は、こうした交通・物流の拠点を所領にしていき、京都の朝廷も津料(港湾通行料)の徴収権を積極的に大寺社に寄進するようになる。
仏教教団も活動の場として注目し、13世紀半ば、叡尊にはじまる西大寺流律宗は、北条氏ともむすびつきながら全国の宿・港町に進出した。

この時代、東アジア海域における交流の中軸を担ったのは、遠隔地をむすぶ貿易と、そのための航海に従事する人々で、東シナ海・南シナ海、および黄海にわたって活動したのが華人海商である。
南シナ海でも、9世紀末の黄巣の乱の影響でムスリム勢力が一時的に東南アジアまで後退し、10世紀以降、華人海商が南海貿易に進出していった。
いっぼう、南シナ海からインド洋にかけてはアラブ・ベルシア系のムスリム海商が活躍していた。
これに対し、日本や朝鮮、東南アジアの現地商人も華人海商やムスリム海商などの組下にまじって貿易に参加して航海や商取引のノウハウを蓄積していった。
こうした商船の活動と海商のネットワークを利用して宗教関係者が海上を往来した。
黄海・東シナ海では仏僧、なかでも禅僧が代表的であり、その活動範囲は江南・華北・日本・朝鮮にまたがる。
南シナ海でも仏教の僧侶や巡礼者のほか、イスラーム教のウラマー(イスラーム学者)やスープィー(神秘主義修行者)をはじめ、さまざまな宗教関係者が往来した。

8、9世紀までは、遣唐使といった国家的な使節団が中心となって華北の大都市を中心に展開した「文明」を日本に輸入する時代であった。
しかしこれにつづく時代では、日本・中国ともに民間貿易を主流とする往来が活発になる。
その結果、中国江南沿海部の港市とその周辺地域に展開していたすそ野の広い中国の「文化」が輸入され、それが日本に「文化」として定着する時代が到来したのである。
茶・水墨画・能・狂言などの中核には、この時期の中国との海域交流を通じて伝来したさまざまな要素がある。
そしてそれは、貿易船が行き来する江南、とりわけ沿海部の漸江地方を中心に展開していた「文化」であった。
このように東アジア海域においては、海を通じた文物交涜の重心が、中国華北の「文明」から江南の「文化」へと移行していったのである。
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  1. 2013/08/30(金) 07:00:00|
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