続・竹林の愚人 秀吉伝説序説と『天正軍記』

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秀吉伝説序説と『天正軍記』


秀吉伝説序説と『天正軍記』(影印・翻字) (上方文庫)秀吉伝説序説と『天正軍記』(影印・翻字) (上方文庫)
(2012/03)
追手門学院大学アジア学科

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奥田 尚 「秀吉の伝記類にみえる大坂城」

秀吉に関係するまとまった「伝記」を載せる史料として、大村由己『天正記』・太田牛一『大かうさまくんきのうち』・『川角太閤記』・小瀬甫庵『太閤記』がある。
よく知られているように、豊臣期の大坂城は、現在見える徳川期の大坂城に完全に覆われて、その地下に石垣遺構として存在する。
すべてに豪華かつ派手好みだった秀吉だから、秀吉の大坂城はさぞ贅を尽くしたに違いなく、フロイスの『日本史』にもそれを示す記録が残されている。
だが、その築城の様子や豪華さを、上記の4種の秀吉の伝記類からうかがおうとすると、事は容易ではなくなる。
『大かうさまくんきのうち』の大沼春睴の「翻字編」の項立てに「柴田修理亮勝家の事」があり、桑田忠親の項立てに「柴田勝家の最期」がある。
年月日順から、この部分に「大坂城築城」に関係する記事が含まれて当然だが、『太閤さま軍記のうち』には、大坂城に関する記述が一切ない。
太田牛一の著作としては、信長の一代記の『信長公記』が有名であるが、そこに大坂城の前身をなす石山本願寺についての記述がある。
午一の『信長公記』巻九には信長の居城の安土城の築城記事もあり、決して牛一が築城などの「普請」の記事を記さなかったわけではない。
いずれにしろ、太田牛一は十分に大坂城を認識していたことは間違いない。

次に『川角太閤記』であるが、「普請」という用語は散見するが、あまり詳しい内容はない。
大坂城や伏見城の築城についても、なんらの記述がない。
これはおそらく、そうした築城にあまり興味を持っていなかったためであろう。

甫庵の『太閤記』では、名護屋城は仮の城にすぎないのに、豪華に過ぎると批判し、伏見城や大坂城の作事・築城などは、「聊かは許す所も有り」というのである。
甫庵は「国病にしては、日本之賊鬼也。検地をし侍りて、万人を悩し、兆民をせたげ、しぼり取て、其身の栄耀を尽せり」と秀吉を厳しく糾弾し、巻七の「金賦之事」の評の部分では「或は大伽藍等を多く営み、或は高麗をおびやかし上下を苦しめ、あまたの金銀を便ひ捨て給はんよりは」とする。

4人の中で時代が古いのは『天正記』の大村由己で、その死去年は秀吉の没年慶長3年(1598)よりも前なので、秀吉の全盛期を描くのに何らの気兼ねも必要なかった。
この作品にのみ「大坂城」築城が描かれるのは、このためである。
『太閤さま軍記のうち』の太田牛一は、慶長5年(1600)9月の関ケ原合戦で西軍が大敗し、慶長8年(1603)2月に徳川家康が征夷代将軍に任命されたことを知っている。
おそらく慶長19年(1614)10月の冬の陣、翌年4月の夏の陣と5月の大坂落城、豊臣秀頼と淀君の自殺は知らないであろう。
それでも徳川の時代がやってきたことを知っており、秀吉の居城の大坂城については、触れることが憚られたに違いない。

『太閤さま軍記のうち』は「後陽成天皇の御聖徳」の項を冒頭に、次項に「日本の黄金時代」として、本文に「太閤秀吉公の御慈悲」をあげつつ「君の善悪は知られたり。御威光ありがたき御世なり」と後陽成の御威光ありがたき御世と締めくくる。
この記述方法にも、秀吉を素直に賛美できない時代に生きた、牛一の工夫がうかがえる。
さらに次の項が「豊臣秀次の出世」で、文禄4(1595)年に秀吉が秀次を処分した悲劇を詳述する。
つまり秀吉は身内の秀次を殺害する程の「悪」であることを冒頭に据え、徳川の政権奪取を正当化する含みを持たせた。
その上で、「条々、天道おそろしき次第」として、三好実休養賢、松永久秀、斎藤道三、斎藤義龍、義龍の妻子の物語を記し、次いで織田信長の最期を描き、秀吉の毛利との和談、明智光秀の滅亡、柴田勝家の最期と秀吉の時代への記述につなげてゆく。
ここにも徳川の支配への気兼ねがうかがえる。
なお、秀吉の死去の前後に触れないのは『(甫庵)太閤記』と同様で、それを描けば徳川の政権奪取に、人々の思いが導かれることを遠慮したのであろう。
牛一に徳川政権への遠慮があったこと、それが牛一が大坂築城を描かなかった理由である。
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  1. 2013/10/23(水) 07:00:13|
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