続・竹林の愚人 昭和の洋食 平成のカフェ飯

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昭和の洋食 平成のカフェ飯: 家庭料理の80年昭和の洋食 平成のカフェ飯: 家庭料理の80年
(2013/02/07)
阿古 真理

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主婦という言葉を広めたのは、大正6年(1917)に創刊された『主婦之友』である。
夫の給料で暮らす女性たちが一家を切り盛りする主婦の自覚を持ち、料理のレパートリーをふやして、家族の健康を守ろうとする時代が始まる。
ライスカレーやオムレツ、シチューは創刊の年に出てくるが、紹介される料理のほとんどは和食である。
戦後70年弱の間に、日本の食卓は大きく変わった。
食卓の戦後復興は、アメリカへの憧れから始まっている。
メディアで紹介したい珍しいもの、新しいものといえば、何といってもアメリカに代表される西洋の料理だった。

洋風料理は戦前、上流階級から始まり、中間階級あたりまでは伝わっていた。
庶民まで広まったものとしては、コロッケやライスカレー、とんかつなどが知られている。
しかし、実際に日常食にしたのは、一部の恵まれた階層だけだった。
大正時代に始まった生活改善運動で、都市部に西洋式の立ち流し式のシステムキッチンらしきものが普及したころに、戦争が激しくなっていった。
だから、戦後の経済成長で、西洋化は一気にやってきた。
見たことも聞いたこともないような料理が、次々とテレビや雑誌で紹介されるようになったのである。
昭和半ばに急速に浸透していった料理が、サラダである。
昭和30年代にサラダが急速に普及していくのは、テレビや雑誌でサラダがどういう料理なのか伝えられ、そして、野菜をナマで食べられる衛生環境が整ったからである。

料理教室は江戸時代末期からあって、良家の子女などが通っていたが、全国に知られるようになったきっかけは、テレビである。
明治の産業革命で生まれた中間階級の主婦たちは、受け継ぐべき伝統がない分、自由だった。
女学校で外国の料理を習い、主婦雑誌を読んで、日々の献立を考えた。
その中には、コロッケやライスカレーもあった。
自ら台所に立つが、家事は大変だから女中を雇う。
そういう階級の、主婦や嫁入り前の娘たちが通うのが、料理教室だった。
彼女たちは、外からの料理情報を採り入れながら、日々の食卓を調えた。
戦後になって、家庭料理の民主化が、テレビを通じて行われた。
テレビさえ見られれば、誰でも一流の先生から料理を学ぶことができる。
料理番組創成期のテレビに駆り出された料理研究家たちは、プロから学んだ経験を持つ、世界各国の料理に精通しているセレプリティだった。
小津安二郎の映画を観ると、主役の家族は豊かな暮らしをしていることが多い。
『お茶漬の味』は、昭和27年(1952)に公開された映画で、西洋化が進む都会と旧来の文化を残す田舎の文化のギャップを描き出した。
やがて、この外国食文化の受け入れ度合いによるすれ違いは、夫婦間だけでなく世代間にも広がっていくのである。

新しい料理を身につけるために、昭和前半に生まれ育った新世代の主婦たちが教科書にしたのは、テレビや雑誌、本などの料理メディアだった。
少し前までなら、親から教わったり、地域の人たちと情報交換をして覚えたような類の知識である。
実はこのころ、上の世代から下の世代に生活の知恵が伝わらなくなってきていた。
年中行事には決まった料理を毎年用意し、食べることが喜びとされた時代は過去になっている。
高度経済成長は、社会全体を豊かにし、この時代以降、主婦たちを悩ませることになる日替わり献立の習慣が、庶民にまで行き渡る。
昭和30年代に、セレブの料理研究家たちが伝えようとした西洋料理の世界は、すでに遠のき始めている。
和・洋・中・エスニックと何でも組み合わせる日本の食卓のバリエーションは、このあたりから拡大しはじめたのかもしれない。
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  1. 2013/10/25(金) 07:00:15|
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